美容サロン価格は、その技術・サービスの価値を表わすもので、顧客にとっては価格がサービスの価値を「判断する材料」となり、来店する際の意思決定の決め手となるものです。すなわち、顧客は価格が妥当かどうかを、メニューの必要度や値頃感によってそのつど決めています。したがって、顧客がそのメニューに感じる価値が価格より低い場合は、そのメニューは売れませんし、逆に感じる価値がメニューより高ければそのメニューはヒットすることになります。
しかしながら、来店してもらう為に、メニューにかかるコストやサロンの利益を無視した価格設定を行うと、サロン経営に深刻なダメージを与える可能性もあります。
これらを考慮すると、価格設定の基本は、経費から判断して、施術すると損をする下限の価格と、顧客が来店してくれる上限の価格の範囲内で決まることになります。
また、サロンが設定する価格は競合サロンの価格政策に影響を与えることも忘れてはなりません。低価格化競争は、競合サロンとお互いの首を絞め合うことにつながる可能性もあります。これらのことを考えると、価格政策がサロンにとっていかに重要な経営課題であるかが分かります。
そのため価格設定は、メニューの特性や広告宣伝費などを総合的に判断して、サロンにもっとも適した方法を検討する必要があるのです。現在、サロンがどのような価格設定の方法をとっているのか、それが適切かどうかを定期的に確認することが必要です。
価格は、前述の設定可能範囲のなかで景気に伴う需給動向、競合状況などさまざまな要素が加味、集約されて決定されるため、絶対的な設定方法はありません。通常は経費・需要・競合サロン状況の3つの要素を踏まえたうえで価格が決められています。
価格がいくらであれば原価を回収して適切な利益を得ることができるか、ということを考慮して価格を決める方法です。美容サロンの場合は飲食店や小売業と違い、圧倒的に原価が安く抑えられます。ですので、ただ単に材料費から求めるのではなく、家賃や人件費、毎月かかる広告宣伝費などの経費を加味するのが適切です。
顧客サイドに立った考え方で、「いくらなら来店してもらえるか」ということを考慮して価格を決める方法です。このような視点から価格を設定する場合には、次の方法が考えられます。
メニューの価値をユーザーがいくらでとらえるか、という知覚価値をなんらかの方法で測定し、それを基準に価格を決める方法です。つまり、最初に「売れる価格」を認識し、それに原価・施術時間・サービスを合わせていく方法です。
たとえば、新メニューとして美容ヘッドスパを開発し、来店した顧客に「2000円ならやってみたいが3000円ならやらない」という声を聞いた場合、原価を下げ、2000円でも十分な利益がでるようにするといった考え方です。原価だけでなく、それに合わせ施術時間も短縮する必要があります。
需要に差がある市場セグメント(区分)ごとに価格を設定する方法です。時間帯(朝のオープン時・昼間、夜など)、顧客(女性)、期間(12月などの繁忙期)などのセグメントごとに価格を設定します。
競合サロンの価格を考慮して価格を決定する方法です。したがって、決定した価格に適合するようにサービスを調整する必要があります。
低価格により薄利多売を行い需要の拡大を図るか、あるいは競合サロンのシェアを奪回しようとする場合に用いられます。しかし、こうした戦略はしばしば価格競争を招き、サロン同士がダメージを受けるだけ、という結果にもなりかねないため注意が必要です。個人サロンの場合、こうした価格競争に巻き込まれた場合不利であり、この価格設定方法はあまり個人サロン向きとはいえません。
販売価格を市場価格と同一または高く設定する戦略は、サロンのメニューが技術、接客、サービスなどの点において、競合サロンよりも優れている場合にのみ用いられます。
特定のメニューを来店しやすいメニューとして価格を安く設定し、それを広告宣伝として多くの顧客を集め、ほかのメニューを合わせることによって一定の利益を確保する方法です。この政策を成功させるためには、目玉メニューが次のようなものであることが求められます。
心理的価格政策とは、顧客があるメニューに対してもつ独特な購買心理に適した価格設定の方法です。具体的には次のようなものがあります。
たとえば、2000円の代わりに1980円としたり、1万円の代わりに9800円と付けた価格のことです。端数価格を付けることによって、「メニューは最大限の効果が最低価格にまで下げられている」という印象を消費者に与え、売り上げを増やすことができます。
顧客が慣習的に認める価格があります。ターゲットにより月の美容代は決まっており、ヘアカットにはいくら、ヘアカラーにはここまでしか出さない、というのが決まっています。このような慣習価格が存在する場合には、これより高くすると顧客に敬遠され、売り上げが減少することがあります。
顧客が価格によって技術・サービスを評価する傾向が強い場合があります。安い価格にしてしまうと敬遠され、高い価格を付けることで信頼を得られる場合があります。この政策はサロンブランディング、個人ブランディングが重要となります。
ここでは価格を設定する際の基本的な視点と手順をまとめています。
まず、その価格を設定することでサロンをどのようにしたいのか「目的」を明らかにします。これによってとるべき設定方法が区分されます。
最終的には、経費・需要・競合状況という3つの要因だけでなく、技術・接客・サービスなどさまざまな内部要因をも加味して決定することになります。
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