誰もが一度は利用したことがあるマクドナルド。
現在、単価アップの失敗や、顧客の流出など重なり厳しい状況に置かれています。
しかし世界には3万5千件以上存在し、ファーストフードを含む外食産業で世界2位の店舗数を誇っているのは間違いありません。
マクドナルドのフランチャイズ展開し、世界最大のファーストフードチェーンに仕立て上げたレイ・クロック氏は、自身の著書『成功はゴミ箱の中に』で次のように述べています。
「職権というのは、一番下のレベルにいる人の手にあるべきだと常に考えていた。店に一番近い立場にいる人間が、本部に指示を仰がずとも決断できるべきだ」
「間違った決断も犯してしまうだろうが、それが人々を企業とともに成長させる唯一の方法なのだ。抑え付けようとすれば、息が詰まってしまい、良い人材はよそへ流れていくだろう」
今回は、このことを意味するのはどのようなことなのか考察していきます。
スタッフのやる気やモチベーション引き出すには、積極的に「スタッフを褒める」こと、「スタッフに権限を委譲する」ことが効果的という考えになります。
業界によっては、褒めず、権限委譲せず、強権的な指示を下すほうが営業成績は伸びるかもしれません。
自衛隊などの軍隊であれば、過度に褒めたり権限の委譲が進み過ぎてしまうと、逆に軍団の士気は緩み、弱い軍団に成り下がってしまう可能性があります。
自らも死地に赴き、かつ部下にも死地に赴くことを強権的に命じる必要があります。
したがって、そのような状況下では褒めたり権限を委譲する余地は少ないといえます。
このように特殊な状況下や時代、あるいは業界によっては、褒めることや権限委譲は害となることもありますが、基本はやはり褒めることと権限を委譲することが、最も効果的にスタッフのやる気を引き出すことができる手法になると考えます。
先日、ある大手美容サロンチェーンの店舗を訪問しました。
フロントにラミネートパネルが設置してあり、「Best staff ○○さん」と題してありました。
そのスタッフの写真が掲出されており、下記のような文言も添えられていました。
「○○さんは、いつも誰に対しても平等に接し、お互いを認め合う姿勢を貫いています。一人ひとりの個性を認めて、称え、自信を与えてくれます。
何よりも、パートナーのみんなから絶大なる信頼があります。
そんな○○さんにベストスタッフを贈ります。
○○さん、素敵な雰囲気をいつもありがとう」
最後に大きな文字で「Thank you!」と締めくくっています。
筆者はこれを見て信頼のあるサロンだと感じました。
そのように称されたスタッフのモチベーションは上がり、さらに仕事に励んでいると予想できます。さらに、ほかのスタッフも褒められたいと願い、仕事に邁進する効果もあります。
そして生産性も上がる効果が期待できます。
筆者はこの美容サロンチェーンの他の店舗も訪問したことがありますが、このようにスタッフを褒めた証を店内に掲出していた店舗はここだけでした。
もちろんほかの店舗でも行っている可能性があります。
バックヤードでは掲出しているかもしれませんが、店内に掲出している店舗は初めて見ました。
推測ですが、このサロンの独自判断で行っていた可能性があります。
「お客にもスタッフの素晴らしさを伝えたい」と店長が判断した結果ではないでしょうか。
本部の許可があるか否かは不明ですが、その店舗独自の施策であることは間違いありません。つまりこの大手美容サロンチェーンは、その店舗に「権限を委譲」しているといえます。
冒頭のマクドナルドのレイ・クロック氏は、部下に権限を委譲することの重要性を説いています。
先の大手美容サロンチェーンの店舗は、まさに現場に権限が委譲されている良い例だと思います。
権限が委譲されているから良い人材がサロンにとどまり、そして褒められることでモチベーションが上がったスタッフが接客する。そうすることによって顧客が他の競合店に流れる可能性が下がります。
美容サロンを展開するの強さの一つに、スタッフを褒める文化と、スタッフに権限を委譲する体制の重要度は高いのではないでしょうか。
記事の著者
GRADBOOK Inc. (グラッドブック)
代表取締役CEO 布野哲也 Funo Tetsuya
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